施設での看護で大事な薬物動態の把握

施設に入所している高齢者の中には、いくつかの疾患を抱えている方もいます。多くの薬剤を使用していることから薬物有害作用の頻度が高く、しかも重症例が高いケースもあります。
高齢者は、効果が思いのほか強く出てしまったり、副作用が発現してしまうことも多くみられます。特に薬物の副作用は身体的なものだけでなく、高齢者自身のQOLにも影響を及ぼす場合があります。
たとえば、副作用に眠気やふらつきがあった場合、転倒や転落による骨折につながりかねず、寝たきりの原因となるわけです。これは、高齢者では、成人と比較して薬物動態が大きく変化していることが原因とみられています。

看護師のケアのポイントとしては、まず高齢者の様子を把握し、薬物の選択、用量の調整、飲み方や飲ませ方を工夫がすることが大事です。また、副作用の発現をいかに防ぐか、あるいは重篤化を未然に防ぐかも重要です。
入所施設で高齢者を迎える際には、患者の身体の状態とともに、使用している薬物について十分に把握しておきましょう。

高齢者が使用している薬物について把握するには、基本的な知識として、加齢に伴う生理機能、薬物動態の変化を知っておく必要があります。
高齢者は健康状態や生活機能が低下するため、それまでの生活習慣を基盤とした疾患が生じやすくなります。加えて、身体的、精神的、環境の変化に適応する能力が減退する時期でもあります。
神経機能の低下に伴い、動作が緩慢になったり、反射能力や筋力が低下したりする高齢者がほとんどです。さらに、薬物動態と関係性の深い臓器の機能も低下するため、変化の大きな臓器に関しても把握しておくことが重要です。